Martin Lutherと音楽

マルティンルターの時代の音楽を、演奏し、録音するにあたり、

ルターの音楽に対する思いを研究してみました。

 


 

マルティン・ルター、その名も宗教改革ではよく知られている。 
けれど、ルターの音楽の才能のことについては、なかなか知られていないのではないか・・・? 
彼は、美声の持ち主で、宿屋のお上も、ルターのあまりの歌声の美しさに、無料で泊めたらしい。 それに、彼はリュートも弾けた。今でいう、ギターに弾き語りの、ポップシンガーと言ったところだろうか。 ルターの功績は、聖書だけでなく、音楽の力も大いに利用したのだ・・・。 

 

1.      聖書の翻訳とその出版 

フリードリッヒ賢明候によってかくまわれたルターは、

ヴァルトブルグ城でのドイツ語翻訳し、15229月には出版。

当時北と南では方言の差が激しかったことを見越し、ルターは両方の方言の言葉を

うまく結合させている。

ルターが求めたのは、読者に誤りなく真の意味を伝えるよう、

学問の無い人にもわかりやすいよう、また、言葉が美しくよい響きであるよう心掛けた。“書かれたドイツ語でなく、語られたドイツ語”

大学では、ドクターと名のついたほどの名説教をしたというらしいから、 
これはもう、ルターが人気があったのは一目瞭然だろう。しかも、新しいドイツ語礼拝で中心にしたのは、コーラス。みんなで歌って、信者の心を 
わしづかみにしようとした。しかも、当時のいわゆる流行歌や、カトリック教会の礼拝で歌われている、スタンダード聖歌讃美歌の、替え歌をドイツ語で作っている。 
そして、何より当時の最新テクノロジーの”印刷”という方法を使ったことによって、 
より多くの人が、その歌本を手にすることも可能となった。 

 

2.      ルターと音楽 

彼は、歌も、リュートもフルートも演奏し、非常にうまかった。

多声楽のカントゥスフィルムスによる作曲法により、数々の作品を生み出した。

また、ルターは、新しい礼拝におき、聖歌隊だけでなく、集まった信徒一同で歌うように勧めた。1523年“Formaula missae „ 1526年 ”Deutsche messe und Ordnung Gottesdienst“を発表。

彼自身、作曲だけでなく作詞もしており、革命以前の宗教歌の他、世俗的なドイツの民謡曲なども作詞に加えている。

メロディーの付け方についてもまた、グレゴリオ聖歌や、古い讃美歌のメロディー使用したり、ドイツの民謡など、親しみのある曲を使う。

また、詩のイントネーションなどを音の高低や、アクセントにも気を使った。

 

ルターのコラール

1.深き悲しみの淵より (詩編130章)

2.Christ lag in Todes banden (Iコリント5章7節、155456、イザヤ2554)

  ドイツの歌“主は生きたもう”より

3.Mit Fried und Freud ich fuer dahin (ルカ22932)

 Bach カンタータ125番の原典。

4.Ein feste burg ist unser Gott

Bach カンタータ80

5.Von Himmel hoch (Luka 2:1-22)

ドイツ民衆歌曲Ich komm auch frembden landen her より

6. Christ unser Herr zum Jordan kam

7.Nun freue ich euch Lieben Christen,

ドイツの歌 Freut euch ihr Frauen und ihr Mannより

 

ルターの作曲方法について

1.聖歌讃美歌による替え歌

    ・Nun komm, der Heiden Heiland (EG 4)は、聖歌Veni redemptorの引用。

     その他、Christum wir sollen loben schon,は、A solus ortus cardineから、

      Gott Schöpfer, Heiliger Geist (EG 126) Veni creator spiritus からの引用。

2.カテキズム歌

  Dies sind die heilgen Zehn Gebot (EG 231)

      Mensch, willst du leben seliglich

3.典礼音楽

      サンクトゥス、キリエ、アニュスデイなどのドイツ語歌詞によるもの。

  Herr   Gott, dich loben wir (EG 191).  は、

  Mit Fried und Freud ich fahr dahin (EG  519).Nunc dimittisより。

4.詩編による音楽

   tiefer Not schrei ich zu dir (EG 299) 詩編 130

  Wär Gott nicht mit uns diese Zeit (詩編124), 

  Es woll uns Gott gen ädig sein (詩編 67, EG 280),

  Lieder  詩編14, 128,詩編46

 

ルターの言葉 ”卓上記録より”
・ 音楽は最大のもの、真に神の贈り物でそれゆえサタンに嫌われるもの・・・  
・ 音楽は不安な人には最大な慰めである。

  その人がたとえほんの少ししか歌えなくても。 
・ 音楽は最高の学である。楽譜は歌詞を生き生きとさせる・・・ 

  
ルターに画家や、音楽家、詩人たちがついていった。 
ルターには補えなかった部分も、他の芸術家たちによって、その感動を伝える 
媒介となっている。クラナッハ、ゼンフル、ワルターなど数えきれない作品を 
今に残している。そして、のちにバッハ、メンデルスゾーン、ワーグナーやドビュッシー 
にいたるまで、ルターが作った歌をもとにして、その魂を受け継いでいる。 
その感動とは、その原動力とは、なんだろう。 
それまで、明かされることなく、十分に伝えきれていなかったこと、ルターが一番心を打たれた、 
”神の慰め”そして、本当の意味での”罪の許し”を知ったからだろう。 
そこに、神を愛を再確認したことへの感動が、人々を動かしたに違いない。 
彼の歌は、今も素朴で、心に残るメロディーを刻んでいる・・・。 

神はわが櫓より

参考資料

 

Christoph Markschies, Michael Trowitzsch: Luther zwischen den Zeiten – Eine Jenaer Ringvorlesung; Mohr Siebeck, 1999; S. 215–219.

Hans Joachim Moser „Die Evangelische Kirchenmusik in Deutschland“

 Heinrich HeineZur Geschichte der Religion und Philosophie in Deutschland. In: Der Salon. Zweiter Band. Hoffmann und Campe, Hamburg 1834, S. 80

Klaus Beckmann „Die Nordeutsche Schule“ Orgelmusik im protestantischen Nord-

Deutschlan zwischen 1517 und 1755 Teil 1 (1517-1629)

Martin Rößler: Liedermacher im Gesangbuch, Band 1 mit Martin Luther, Ambrosius Blarer, Nikolaus Herman, Philipp Nicolai, Johann Heermann; Calwer Taschenbibliothek; 2. Aufl., 2002; Seite 21 ff.

Werner Tell „Kleine Geschichte der deutschen evangelischen Kirchenmusik“

Ernst-Klett-Verlag: Arbeitsblätter unisono: Aus tiefer Not; Stuttgart 2005 (pdf

CD

Luther/ Othmayr Walter, „Musik of the Reformation“ Himlische Cantorey

Stralsunder Motettenhandschrift 1585: Schola stralsundensis

Turris fortissima:Schola stralsundensis