内なるオルフェオの歌

音楽はどこからやってきたのだろうか。 
また、どこへ行こうとしているのだろう。 

永遠の音楽のシンボルであるオルフェオは、 
今日も尚、私たちの魂に問いかける。 

「内なるオルフェウスの歌」アントニー ルーリー著 
によると 

人間は2つのタイプの音楽をもっている 
ひとつは精神に宿る音楽(音で表現される秩序と調和の概念) 
と、歌や楽器の演奏や舞踏演技の中で表現される音楽である。 
彼はその中で後者が優れた状態であるためには前者によって管理されなければならないと書いている。 

また、シーリオ・フィチーノという哲学者は 

私たちには、まったく聴くことのできない神なる音楽には2つの種類がある。 
1つは、完全に神の心の中に内蔵される沈黙の音楽であり、 
もうひとつは、天体が宇宙の舞を舞うとき、その運行によって生じる喜びに満ちた天球の音楽で、どうやらその音は信じがたいほど大きくて私たちには聴こえないらしい。 

この神なる音楽の「概念」は、人間の霊魂に刷り込まれていて、これだけが私たちが自分の感覚の及ばぬ何ものかを理解する唯一の手段なのである。 

とルーリーは記している。 

現代の私たちには、信じがたいほど霊感に満ちた興味深い内容である。 

私たちは音楽によって魂に触れることができる。 
心を揺さぶられる思いに浸る瞬間がある。 
その神聖なる瞬間こそ、求めているものに違いない。 

クラウディオ・モンテヴェルディー(1567-1643)は、 
有名なギリシャ神話オルフェオ物語をテーマにオペラを作曲した。 
時代背景においては、ちょうど、ルネッサンスとバロックの中間にあたり、宗教改革や30年戦争といった、あらゆる面での過渡期でもあった。そういった時代の中、モンテヴェルディは、 
最後のマドリガル作曲家であると同時に、新しい時代の幕開けを代表する作曲家となった。 
また、彼は音楽だけでなく、舞台芸術、ダンスにおいても、大きな影響を与えていった。 
そして、より個人の理性と感覚を追求していくバロックへと発展していった。 

そして現在、芸術家のたどる行き先は・・・? 
私自身、思うのは、より内の世界へ帰ることだと思う。 
わたしたちの魂の奥深くに眠る、オルフェウス、 
すべての原点である霊的な場所へ、耳を澄ませて沈黙することではないだろうか。